角部屋のすみっこ

つぶやきにも満たないひとりごとを書くための場所。

地球から来た男

八月に入り、いよいよ夏休みっぽい気候になってきた。暑いよぉ…。

 

小学生はとっくに夏休みが始まっているようで、かてきょーで担当している男の子はお盆を遊びつくすべく夏期課題に追われている。

特に鬼門となるのは読書感想文のようで、終始「えぇー本読むのめんどくさーい」といった様子。
たしかに本の感想なんて各々の中にとどめておけばいいじゃん!とは思う人も多いが、それを良しとはしないのが夏休みの宿題である。

 

そこで、こういうとき僕はいつも星新一ショートショートを薦めることにしている。一話が2、30ページだから短編小説の中でも特に読みやすいのだ。

星新一ショートショート中では「地球から来た男」という話が印象に残っている。

小学生のときに読んだのだが、内容は今でもはっきり覚えている。

とある産業スパイとして潜り込んだ主人公。しかし厳重な警備により捕まってしまい、開発途中のテレポーション装置で地球外に追放されてしまう。

気づいた時には未知の星の野原に横たわっていた。行く当てもなく歩き回るうちに、主人公はこの星がもといた地球にそっくりなことに気づく。自分と同じ言語を使い、切符を買って電車に乗り、ファミレスに出入りする。自分の家があった場所を訪ねてみると、自分の妻と息子に瓜二つの人物たちが出迎えた…。

その星はなんだったのか最後まで明かされることはなかったが、最後のシーンでは主人公は住み心地は悪くないとしつつもどこか心細さを感じていた。

 

結局のところ、この話では「きわめて地球にそっくりな地球はもはや地球なのか?」という問題が話の軸にある。
今いる星は異世界に飛ばされたという事実を除けばすべていつも通り生活できるのだ。
この場合、今いる環境をどう受け止めればいいのか。
カギとなるのは「気持ち」の部分だと思う。
どんなに似てようとも地球ではないと感じたら、もはやそこは地球ではない。
しかし、その気持ちがだんだん異世界の地に根ざし落ち着いてしまったら、そこは第二の地球と呼んでいいのかもしれない。
留学生が長期間のホームステイをしたとき、その家族や地域に愛着がわく心理と同じだ。

 

物語の終盤で主人公は不思議な声を耳にする。

どこからともなく声が聞こえる。
「住み心地はどうだい」
見まわすが、誰もいない、幻聴というのかもしれない。(16ページ目より)

声の主はおそらく主人公の不安に由来する、自分に向けた心の声なのだろう。

 


人はみな少なからず大小さまざまな寂しさを抱えている。
それは目に見えないので時々自分一人が孤独なのではないかという錯覚に陥る。
でもそれは個々人の気持ちの持ち方の問題で、自分が頭を抱え込んでいる間にも世界は相も変わらず動いている。
「地球から来た人」の主人公ではないが、目を閉じて開けた次の瞬間には異世界にいるかもしれないのに、一人勝手に孤独に感じて寂しくなるというのはとてももったいない気がする。それにそんなふうに悲観しながら生活するのは、いささか生きづらいのではないだろうか。

ふと感じる寂しさに折り合いをつけ、自分にとって落ち着く住み心地のいい環境を身近に少しづつ増やしていくのが大切なのだと思う。

 

 

 

 

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